ちゃぷん・・・とぷん・・・



ゆらゆらと、液体が揺れる。

揺らして笑うは狂った少年。



とぷ・・・



先日買った隠し味。


効果は――





4・50分後。











‡‡ deliro affetto ‡‡












ちゃぷっ・・・

「だれだっだれだっだれだー そらのかなたにおどるかげー しーろーいーつーばさーのーっとぉ」

持参したタオルで体を洗い終えてから湯船に浸かって、外には聞こえない程度の小声でツナは歌う。

「・・・ちーきゅーうはひっとっつっ わーったーらふったっつっ・・・・・・だったっけ・・・?」

間違った歌詞を歌いながらもツナは気付かない。彼はとても気分が良かった。

「きれいなおふろだなー・・・」

良く掃除をしてあると言うよりは、とにかく新しい感じのひしひしとする風呂に、気分の良くならない人はいない。
ましてや今は美味しい料理で満腹だ。

「さすが借りたばっかり。さすが城育ち。」

一軒家の自分の家と同じか、それより広く見える風呂に、ツナはなんとも気分良く浸かっていた。




「・・・・・・・・・。」
・・・こっくり


「・・・・・・・・・。」
こっくり


「・・・・・・・・・。」
こっくり・・・


ぶくぶくぶくっ

「はぁッッ!!!!!!」
ざばっ

「ケホッ、あ、危ない!死ぬ!普通に死ぬところだった!寝てた!俺、人んちのお風呂で寝て死んじゃうところだった!!」

数度舟を漕いだ後、ぶくぶくと沈んでいった口と鼻に、ツナは飛びあがった。
短く咳き込んで、ぜーはーぜーはーと一応近所迷惑にはならない程度に慌てる。

「はー・・・気持ち良すぎて危なかった・・・。なんて恐ろしいお風呂なんだ・・・。・・・でっ溺死する前に上がろ・・・」

そう呟いてゆっくり湯船から上がった。

「かがくにんぽう・・・ひのとりだー・・・だっけ・・・・・・んー・・・?」

最後のシャワーを浴びている間に先程の歌の続きを歌おうとして、なぜだか思考がままならないことに気付く。

「・・・なんかまだ眠い・・・リラックスしすぎたかなー・・・。もう出ないとなんかこの床で寝そう。・・・綺麗だけど、獄寺くんビックリしちゃうよね。」

そう最後に独りごちて、ツナは風呂場を後にした。






* * * * *






「ふー・・・良いお湯だったよー!危うく溺死するところだったくらい。次どうぞー。」

タオルを首にかけてほかほかと湯気を上げながら、眠たい目を擦ってリビングに現れたツナに、
「はーい!・・・って、溺死・・・?!・・・と、とにかく湯加減は丁度良かったみたいですね。」
獄寺が台所から声を上げた。

「俺も残りの食器片付けてから行きますんで、10代目はテレビでも見ていてください。」

「・・・・・・・・・っ。」
返事をしようとしたツナの体が大きく傾いた。

――ご飯食べさせてもらったのに。食器仕舞うの手伝わなきゃ。

でも・・・・・・なんか今・・・・・・口動かしたくない・・・

・・・いや・・・・・・動かせない・・・?


・・・・・・とにかく眠い・・・・・・

どさっ

ふら付く足で、なんとか近くのソファに倒れ込む。


――まだ・・・早いのに・・・こんなところで寝たら悪い・・・

・・・でも・・・なんで・・・・・・こんな・・・・・・ね・・・む・・・・・・



最後に誰かの足をうっすら視界に入れて、ツナの意識は暗闇に堕ちた。


すーすーと寝息を立てるツナを、獄寺がふわりと持ち上げる。

そのまま、にっこり微笑んだ。



「おやすみなさい・・・良い夢を。」














* * * * *













・・・寝返りが打てない。なんだか寝苦しい。

「ぅ、うーーーん・・・・・・」

金縛り?嫌な夢。

目をうっすらと開く。

――まっくら・・・

俺の部屋じゃない。俺真っ暗にはしないもん。

じゃあ誰の部屋?
・・・ああそっか、泊まりに来てたんだ。

今何時・・・・・・

ジャラッ
くんっ

「わ!」

どさっ

起き上がろうとして、5センチも上体が上がらなかった。
また布団に逆戻り。・・・いや、さっきので下が軋んだからベッドか。

両腕が上で一つにまとめられてるみたいだ。
手首には布の感触。でも外側は・・・冷たくて硬い。・・・鉄?

ちゃんと目を開けようとして目の回りの何かの存在に気付く。
布・・・?よりちょっと硬い・・・アイマスク?
気持ちの良い肌触りだ。少し頭を振ってみる。
頭の後ろまで回ってしっかり固定されてるようだ。


――・・・なんだろ・・・頭、ぼんやりする・・・


ジャラッ

足を動かそうとしてまたさっきの音がする。
金属音・・・・・・鎖・・・?

今度は足を閉じようとしてみた。
くんっくんっ

・・・閉じない・・・

いくら力を入れても肩幅程の隙間は絶対に埋まらなかった。

ジャララ・・・
くくんっ

足を曲げようとしても同じように途中で止まる。
大体直角以上はどうしても曲がらなかった。

なんで・・・動けない・・・・・・・・・


・・・・・・・・・動けない・・・?


・・・獄寺くんの家なのに・・・?



服、着てない。



・・・・・・・・・ッ



「――ど、どうなってんのこれッ!!!?!!!?ここッ、どこ!?うっ、何これ嫌だ!だ、誰かぁ!!!!」

覚醒と共に声の限り叫ぶ。

「動かないよ全身!目も見えない!嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だ!怖いよぉ・・・ッ!!!」

叫べども叫べども、返ってくるのは沈黙のみ。

キーーーン・・・・・・

耳が痛くなるような沈黙に、ツナの体はガタガタと震え始めた。


――なんで?獄寺くんの家に泊まりに来たんだよね?ご飯は・・・食べた。お風呂は?・・・入った、ような気がする。・・・じゃあその後は・・・?
思い出せない・・・確か凄く眠たくて・・・・・・。ってことは寝ちゃったんだ・・・。で、ここはどこ?獄寺くんの家・・・?

「・・・って、そんなわけない!」

彼は俺のクラスメイト。友達。慕ってくれてる人。名目上は部下。・・・自称、右腕。

獄寺くんの家で寝て、今こんな状態ってことは・・・

「誰かに捕まった・・・!?ご、獄寺くんは!!?獄寺くん!!無事!!!?」

一応呼びかけてみるが返事は当然沈黙。

――どうしよう・・・獄寺くんの言ってた刺客ってやつかなぁ・・・獄寺くん大丈夫かな・・・どこにいるんだろ・・・。まさか・・・


「死・・・・・・・・・?」


全身からサァァっと血の気が引いた。

――いやっ、大丈夫大丈夫・・・!!俺が生きてるんだもん、きっと殺されてはいないはず・・・っ!きっとどこかに捕まってるんだ。こことは別の!

・・・・・・でも・・・こんなのにされてどうする・・・?ほとんど身動きすらできない・・・・・・拷問とか・・・されるのかな・・・

ガチガチと歯が鳴った。

「嫌だ!怖い・・・!俺、何も知らないよ!ボスなんてならなくていいから!譲るから!!だからこれ取って!!」

ジャラッジャララッ
両手足を動くだけ動かした。きっと捕まってるんなら見張りとかがいるはずだ。

しーーーーん・・・

しかし、返ってくるのはやはり静寂のみ。

「うっ・・・獄寺くん・・・誰かぁ・・・・・・」

恐怖でもう泣いてしまう。という時になって、

カチャリ・・・

小さな、ドアの開く音がした。


ビクッ!

静寂に耳の慣れたツナにはその音すら大きく響く。無意識に体が跳ねた。

「だ・・・・・・・・・だれ・・・・・・?」

全身が震える。歯がガチガチ煩い。
――怖い・・・・・・!!

「・・・・・・・・・。」

返事はない。

代わりに、小さな小さな足音、裸足でフローリングをぺたぺたと歩く音が聞こえた。
足音はベッドに近付いてくる。

「ぃやだ・・・・・・誰!!?」

ジャンッジャララッ!
必死で逃げようとするが、上下の鎖のせいで全くの無意味に終わる。

――怖い・・・怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわい――







「・・・10代目。そんな震えなくても大丈夫ですよ。」







「獄寺くん!!!!?!!!!!?」

声だけでもすぐに分かった。彼の声。無事だったんだ!

「だ、大丈夫?獄寺くんは捕まってなかったの?抜け出したの?何がどうなったの?ここはどこ?なんでこんなことに・・・」
一気に安心して質問を投げかけるツナに、獄寺は順に答える。

「大丈夫です。えぇ、捕まってませんでしたよ。あなたはお風呂入った後すぐに寝てしまって・・・ここは、俺の家です。」

――俺の家?

「・・・ぇ・・・?どういう意味・・・・・・?」

ぺたぺたと足音がゆっくり近付く。

「一応高いマンションなんで防音もバッチリなんです。」
「どういうこと?・・・なんでもいいからこれ早くとってよ!捕まってないならなんで俺はこんなことになってんの!?」

ぺた・・・ぺた・・・

「だからどんなに大きな声を出しても外には聞こえないんですよ。」
「え、聞いてる!?俺、獄寺くんが何言ってるか、全然分からないよ!!」

ぺた・・・

「10代目、落ちついて下さい。」

ビクゥッッ!!

「わぁッ!誰!?獄寺くん!!?」

そっと剥き出しの腹に急に触れられて、ツナの体がまた跳ね上がった。

触れる手が、熱い。
・・・体が冷えてるから?

「10代目・・・こんなに震えて・・・なんて可愛らしい。」

ぎしっ

微笑んで獄寺はベッドに乗り上げる。

「か、可愛らしい!?何、言って・・・」







「あなたをそうしたのは俺です。・・・痛くはないですか?」










「――・・・・・・・・・・・・・・・は・・・・・・?何・・・・・・?」






「大丈夫そうですね。よかった。一応手枷にも足枷にも布を巻いときましたから。」

そう言って、ツナの上に覆い被さった獄寺は手首に口付けた。

ぴくん・・・とツナの体が小さく動く。

「・・・やっ・・・・・・何言ってんの・・・?痛いとかじゃないでしょ!?獄寺くんがなんで俺にこんなことするの!!?どいてよ!これ取ってよ!!!」

「これから一週間は、あなたがどこで何をしていようとも気にする人は誰一人いません。」
「どうしちゃったの獄寺くん・・・?!」

――おかしい。ここは獄寺くんの家で、これは獄寺くんがしたことで、だから取ってくれなくて、ご飯食べた後お風呂入って凄く眠くなって、
こんなことされてても起きないくらい寝ちゃって、今圧し掛かって話してるのは獄寺くんで・・・



「つまり、あなたはここから絶対に逃げ出す事ができないんですよ。10代目。」


・・・カタ、カタカタ・・・

体がまた震え始める。先程とはまた違う恐怖で。


「獄・・・寺・・・く・・・」











「あなたはもう俺のものです。」











喉元に口付ける。そのまま、強く吸った。

ビクンと、震える体が応える。


「・・・ゃ・・・・・・・・・」




震える声。

ぽろぽろと、泣いているのかもしれない。

目隠しで見えないのが、とても残念だ。






獄寺は笑った。









切れた糸は戻らない。




戻れない。











戻さない。










「これから一週間、よろしくお願いします。」


食事の時と同じ言葉、同じ顔で、

獄寺は微笑む。





















サぁ、狂っタ時間の始マりだ。
























――――――――――

中書き。


ガッチャマンの歌詞。本当は2回地球は一つですよね^^

次はとうとうエロに突入です。

初めてなのできっとまだまだ知識不足の経験不足だとは思いますが、
精一杯頑張ろうと思いますので、どうかよろしくお願いします(土下座)





太字にカーソル合わせると意味出ます。





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