ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



――・・・只今大雨。



ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



――・・・・・・バスは2時間待ち。





††  大雨 バス停で。  ††





なんだこりゃ。

バス停で時刻表を見て独り言。


後1分ほどで来ると思っていたバスは実は勘違いで、曜日の覚え違え。

20分ほど前に行ったバスの次は、今から2時間強も先だった。


この炎天下、俺一人で2時間?ありえねー・・・

時刻表を見た後言った一言。


辺ぴな所での練習試合に、

バカ騒ぎをして相手校のグラウンド整備の手伝いを命じられた自分に、

来る時にこんな重要な事を適当に覚えた自分に、

帰り際、バスの時刻を教えてくれなかった奴等に、

何よりこのバカみたいに晴れ渡る真っ青な空に、

思わず叫ぶ。


バッカやろぉーーーーー!!!


誰もいない田舎道。つぅ、っと流れた汗を手の甲で拭いた。










ポツ。

――・・・ん?


ポツポツポツポツ。

え・・・なんだ?蝉??


蝉にしてやられたかと見仰ぐ。

――と。


ぃてっ!

目に何かが入ってきた。


なん・・・・・・水ぅ?

最後の方は自分の耳にも聞こえなかった。




ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




お、おいっ!なんかのロケかこれ!?・・・って、んなバカな!雨だ雨!!

一人でつっこんで頭に手をかざして、無駄な抵抗だと諦める。もうどこもかしこもびしょびしょの濡れ鼠だ。


鞄はスポーツバッグ。ビニール製なことに感謝する。

財布やら何やら、大事な物は鞄の中だ。


あーあ、天気予報では雲一つない晴天って言ってたのに・・・

さっきまで暑いだのなんだの呟いてた事も忘れて雨に愚痴る。


まぁここまで濡れりゃあ気持ち良いな。

ふふんと笑って水が滴る前髪を払いのけた。




ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




生憎と辺ぴな所のバス停。学校からも歩いて一時間弱。

駅までは更に倍ほどかかってしまう。戻るのも進むのも面倒だ。

やることもなし。話す人もなし。

後ろは一面田んぼ。目の前も一面田んぼ。

道路は未舗装。でこぼこの砂利道。


へへっなんかトトロみたいだな。でこぼこっじゃーりーみーち〜♪ってか。

慰みのように置いてあるベンチに座って、足をプラプラ振りながら歌う。だってやる事ないし。


あーあ、トトロがいてくれたらきっと楽しいのになぁ・・・ってかまず退屈はせんよな。

むむむ、と言った一言に、思わぬ返答があった。



トトロじゃなくて残念だったNa。




ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




――・・・あれ。

なんでまだいるんスか?

声の主を見ようとすると、雨が目に入って痛かったので、やり場のない目線をぼーっと膝に落とす。


・・・ちょっと野暮用があって、って言やぁ十分Ka?

気だるそうに言われた言葉に、なんとなくだけど昔の女関係かなと思う。
しつこい女の子は嫌いそうだ。


十分。・・・です。

関係ないし。と心の中でつけたして。


びしょ濡れだNa、お前。

バカにしたような言い方。・・・というよりは、事実を述べるだけ、といった語調。


天気予報を全面的に信頼してるんで。

はぁ、と頬を人差し指で掻きながら薄目で見上げた先には、当たり前のように折り畳み傘を差した先輩がいた。


そぉ言う先輩は、なんであんな晴れてたのに傘なんか持ってるんスか。

手で目を守って、ぽかんと見上げ、意味のない会話は続く。


・・・濡れるのが嫌いなんだYo。


――・・・は?


・・・・・・雨の日はだるくなるんDa。濡れるともっと。だから傘は何時でも持ってんだYo。


ふて腐れるように言われた言葉に、あぁ、と相槌を打つ。

なるほど。先輩猫っぽいっスもんね。


・・・・・・関係あんのKa、それ。

ジト目で言われた言葉に、あははと返す。

知り合いにそんな奴がいるもんで。


・・・そいつとオレとは別だRo。

苦笑しながら言われた言葉に、そうっスね、と軽く返す。




ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




・・・傘、入れてやろうとか思わないスか?


今更だRo?


・・・それもそう、っスね。

別に本当に入れてほしくて言った訳ではないので、苦笑いしながら返す。




ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




先輩、いつもはぺらぺら鬱陶しいくらいに喋ってるくせに、今は静かなんですね。

ちょっとした軽口を言うと、だらりと肩と首を落として返される。


雨降ってる時はだるいって言ってんだRo。お前こそ、普段に比べりゃ随分静かじゃねぇKa。


・・・それもそうだ。

そう思い

まぁ、俺にだってたまにはそういう時もありますよ。

苦笑して言った言葉に、そうKa、と返事が降りてくる。




ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




全然止まねぇっスね・・・。


全く・・・困ったもんDa。


そこで会話が止まる。

――といっても、元々ぽつりぽつりと話すような物だったが。

ざーざーと未だ全く衰えを見せない雨を全身で受け続ける。

前を向けばそれだけで目に雨が入るような雨なので、
開いた膝の上に肘を乗せ、そこに体重をかける。力なく首も手もだらりと垂らした。



・・・・・・野暮用ってなんだったんスか?

ちょっとした気紛れにボソリと言った質問に、怪訝そうな顔が返って来る。


・・・・・・・・・十分だって言ってなかったKa?


・・・・・・言いました、けど・・・まぁなんとなく。

そう言うと先輩は雨の音に消えてしまいそうな小さな溜め息をついた。



・・・猫だYo。



・・・・・・へ?

本日2度目の間抜け声。



猫湖さんのことですか?


バーカ。そういう意味じゃねぇYo。まんまDa、まんま。


・・・猫でも飼ってるんですか?


なんでそんな捻くれた物の取り方すんだYo・・・。


だって本当に分からないものは仕様がない。

大体、『猫』だけで分からせようとする方が悪い。


――妙に懐いてきちまってNa。あのまま付いて来られてもどうしようもねぇし、山に放してきてたんだYo。


・・・・・・。


えぇ〜〜〜〜っっっ!!!!?そんな!!
ついに先輩女だけでは満足できなくなって、メスにも手を出したんですかーーーー!!?

・・・とか、普段なら言いそうなところだけれど、どうにもそんな雰囲気じゃないし、騒ぐ気力もなかったので、

・・・珍しい。先輩に動物愛護の精神なんてあったんスか・・・。

くらいに留めておいた。



・・・あのなぁ・・・。

がっくりとうな垂れて言われて。


なんスか?

そ知らぬ振りで答えてやる。


先輩はジト目で言う。

お前・・・俺をなんだと思ってんだYo・・・。



その先輩の言い方がなんだかおかしくて








* * * * *
ここまで。

かぎかっこなしの小説は楽しかったんですが、ストーリーが思い浮かびませんでした。
このままバスに乗るまで会話が続いて、最終的に猿野が虎鉄のことをちょっと見直す、という話だったと思います。







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