「あわわわわわわ〜〜っっ!!」
「・・・腕はプロ級だと言ったのはどこのどいつだ・・・」
†† ラブ・コール ††
「――なぁ・・・」
「・・・」
「――おいって!」
「・・・」
「――なぁ!!」
「少しくらい黙ってられないのか?バカ猿が・・・」
読んでいた本から漸く顔を上げたと思えばこんな台詞。
しかも溜め息付きで。
俺は今、コイツの部屋でベッドに寝転がってるトコロ。
コイツはベッドに凭れ掛かり、何やら難しそうな本をずーっとずーっっと読んでいたトコロ。
コイツの家に来てからずっとだ。わざわざ来てやった俺をほったらかしで。
――しまいにゃ愛想尽かすぞこんにゃろ。
心中でそう思いながらも、俺はなんとか、それでも引きつってしまった笑顔を作って一言。
「来週スケート行かねぇ?」
来週は都合良くというか、両者部活も無いし。
――つまり言い替えれば来週しかチャンスが無いと言うことで。
そう、此処で気分を害されてはいけないんだ。
「・・・それは俺の家では不服だと、そう言いたい訳か?」
「はぁ?」
なぁんでそうなるんだよ!
この自慢じゃないが我慢という物だけは苦手な俺様が、
ムカっとくる台詞も流して、且つフレンドリーに誘ってやってんのに。
ぐぬぬ・・・やっぱやめとこーか・・・
ふっと浮かんだナイスアイディアもなんとか押し戻す。
頑張れ俺。ファイトだ俺。
自分を励ましてニッコリ言う。
「・・・じゃなくて!――そりゃ、無涯の部屋も良いけど・・・、来週丁度どっちも部活無いんだし、別に行っても良いだろ?」
妙に甘えるような声になってしまうが気にしない。
「・・・ふん、まぁスケートなんぞには全く魅力を感じないが、お前がそこまで言うなら行ってやっても良いな。」
『無涯の部屋も良いけど』に気を良くしたらしいコイツは、つい・・・っと顔を背けてコイツなりの二つ返事でOKを出す。
仕方なく行く、って態度が少々、どころかかなりムカつくけど、まぁいいや。とにかく行けるんだし。
「うっし、じゃあ決定☆時間は・・・来週の11時に俺がアンタんち行くから、用意とかしとくこと!」
「――遅れるなよ。」
うあ、いちいち腹立つなぁ・・・。
――とか思ってるとふと疑問がわく。
「そういえばアンタ、スケートは滑れんの?」
・・・・・・・・・・・・。
はぁ・・・と無涯の口から溜め息が洩れる。馬鹿にしてんのかコラ。
「――そういう質問は最初にしろ。もし万に一つでも俺が滑れなかったらどうするんだ。猿ガキが・・・」
「猿ガキ言うな!!滑れなくても無理矢理連れてってやったよ〜っだ!滑れなくて手摺りにしがみ付いてるアンタを見るのも、
こけて尻モチついてるアンタを見るのも絶対楽しいし♪」
そう言うとコイツはまた何時ものようにふんと鼻で笑って。
「残念だったな。俺は人並みには滑れる。・・・そういうお前こそどうなんだ。」
「へっへ〜ん!モチバチで滑れるね!っていうかむしろプロ級!!皆が俺の滑りを見たら思わず道を空けるほど!!」
――だと嬉しいな☆
・・・実は俺は今時珍しく、スケートというものをやった事がない。
まぁしかし、俺の生まれ持った才能があればスケートなぞ簡単にこなしてしまえるだろう。
まるで根拠の無い自身に満ち溢れた表情で、俺は大きくふんぞり返る。
「・・・ふん、そいつは見物だな。」
「・・・・・・・・・それ、誉めてんの?けなしてんの?」
「――好きなように取れば良い。」
ニヤリと笑ったいつもの顔。
こういう顔でコイツがこう言う時は・・・・・・
「やっぱけなしてんな!!このクズヤロォ!!」
「なんだ?」
「・・・呼んだんじゃねーーー!!!」
「近所迷惑だ。黙れ。」
「アンタこそ、その口縫い付けて一生喋れないようにしてやる!!」
「それをすると困るのはお前だぞ。」
「・・・どういう意――」
そこまで言いかけてハッとする。無涯のこのいっやーな笑み・・・・・・
解かった瞬間ボッと顔が赤くなる。
――でも、んなこと気にしてられるか!!
「いっぺん死ね!!この万年発情期クズ男ーーーッッ!!!!」
・・・大きく地団駄を踏んで叫んだ後、
あぁまた隣りのおっさんが怒鳴り込んで来るな・・・と頭が痛くなるのだった。
++++++++++++++んで翌週。+++++++++++++++
* * * * *
ここまで。
猿野が屑桐さんへのバレンタインプレゼントに、
バレンタインにスケートリンクが開催してる、氷上にでっかいハートをライトアップしながら
投稿されたはがきを読み上げるイベントで、日頃の感謝を伝えるという話だったんですが、
デート風景はなんか甘々すぎて私が飽きてしまいました。
時間的に一月末:デート約束→バレンタインの一週間以上前にデート:早目のバレンタインプレゼントだけど・・・な感じでした。
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