給食





転校初日は死ぬ気バトルしてたらかお昼食べてなくて、
次の日もタイムカプセルだかの騒動で食べてなくて、
3日目になって来日初めての昼食で、
「10代目!一緒にお昼食べましょうよ!」
かなり大き目のお弁当箱を抱えてわくわくと周りに花を散らしながら言う獄寺に、ツナは苦笑する。
「あ、あのね獄寺くん。日本の中学校には給食ってものがあって、自分の席に座って班の人と食べるんだよ。獄寺くん6班でしょ?俺は2班だから、一緒に食べようって言ってくれて嬉しいけど、それはまた校外学習の時とかに置いといて。」
ツナから聞かされた事実に獄寺は物凄い衝撃を受けた。
「そんな…」
「…えーと…じゃあ俺当番だから…」
そんなこと聞いてなかった!とか怒り出したら怖い。という気持ちと、同じ班の子がどんどん教室を出て行くので、慌てたツナは給食着のところへ急ぐ。
「当番ってなんですか?」
獄寺がその後ろを追った。
「週交代で1班・2班・3班…って給食の配膳が回って来るんだよ。今は2班だから6班まではまだ1ヶ月あるね。」
給食着に腕を通して、頭に三角巾を巻きながらツナが答える。
「じゃ、」
俺行ってくるから教室で待っててね。
最後にマスクをつけてそう獄寺の方を向いて言いかけたツナが止まる。
ツナの目には頬を染めて自分を凝視してくる獄寺が映っていた。

――かっかわいい…っ!

獄寺の頭はそれで埋め尽くされていて、ちょっとツナには大き目にできている真っ白い給食着がワンピース着てるみたいだとか、前髪だけ残した同じく真っ白い三角巾が帽子のようだとか、マスクに顔の半分を覆われて上目遣いに見てくる目だとか、ああもう天使様…vだとか、そういうのを見るだけで獄寺は精一杯だった。
脳内フィルタの威力は凄まじい。
給食着なんて誰が着ても不恰好になるに決まっているのだ。

「〜〜ッじゃ、俺行ってくるから!」
なぜだか背筋に嫌なものを感じて、ツナはそそくさと教室を出ようとする。
「あの!」
半歩教室から出たところで案の定獄寺に呼び止められて、嫌だなーとか思いながら振り返る。
「俺も付いて行って良いですか?…その…見学しとかないと一ヶ月後困るかもしれないし…」
もじもじと言い辛そうに言う獄寺にツナは苦笑する。
「…うん、そうだね。じゃあ行こっか。」
獄寺はまた花を辺りに撒き散らした。

『マスクがない子は入っちゃ駄目よ』という給食のおばさんの一言で、給食室の出口で待つことになった獄寺は、出てきた主人が両手で持っているものを見て驚いた。
「10代目!なんで10代目がそんな重そうな物を一人で持ってるんですか!?」
牛乳瓶一クラス分が入った黄色いケースを重そうに持ち上げるツナが、その一言に引きつった笑いを浮かべる。
「なんかのんびりしてたからこれしか残ってなかったんだ。軽いボウルとかから早い者勝ちなんだよね。」
「そんな!あいつら…。」
随分前を歩く班員に今にも殴りかかりそうな勢いに、ツナが慌てる。
「あっ、おっ重いなあこれ!獄寺くん半分持ってもらって良い!?」
「そ、そうでした!すいませんすぐ持たないで…。」
ひょいとケースの片方を持ち上げて、一気にそのままなくなった重量にツナが驚く。
「いいよ獄寺くん!半分持つから!」
本当は重いのなんて嫌いだから持ってもらえれば楽なんだけど、
今の獄寺は牛乳のケースを持ったまま軽々と走って行って、前の班員に持てと押し付けるとかし出しそうだったので、というかすでに獲物を睨んで駆け出すところだったので、ツナは慌ててケースに縋り付いた。
「こんな重いもの10代目に持たせられません!」
足を止めた獄寺は振り返って叫ぶ。
ああもうみんなに見られるから止めてお願い。なんで普通にしていられないんだこの人は。

「――あんまり過保護にしてると俺、弱弱になっちゃうよ!」

図星を貫く一言に獄寺が返す言葉を飲み込んだ。
「……じゃ、じゃああの…半分ずつで…。」
「うん。半分ね。」
本来二人で持つものだし。

何気に集まっていたギャラリーが微笑ましいと笑った。











――――――――――

嗚呼懐かしき学び舎よ。




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