†† ギョクセンカ ††





最近・・・というか昨日からツナに対する獄寺の様子がおかしい。
学校で会えば今までと同じで嬉しそうに挨拶してくれる。
それはいいのだが――


「10代目、どこ行くんですか?」
席を立つと聞かれるいつものセリフ。
「えっと・・・ちょっとトイレ行ってくるね。」
改めて言うのも恥ずかしいなぁと、ちょっと照れて言うと、
『あっじゃあ俺も!お供します!』
慌てて立ち上がって言うのだ。いつもの彼なら。
しかし昨日はというと。

「あっ、そうなんですか。早く行ってこないと次の授業始まっちまいますよ。」

ごく普通にそう言われて、なんだか拍子抜けしたような・・・寂しいような気分になる。
でもよくよく考えてみると中学生にもなってたかだかトイレに二人で行く方がおかしいと気づく。
女の子じゃないんだし。そう思い直し、多少の違和感を感じながらも『行ってくるね』と彼に告げていそいそとトイレに行く。
走る短い距離でもふと違和感を感じ、一人で行くのは久しぶりだったと改めて認識する。
どうもこの短期間で二人でいることに慣れてしまっていたようだ。

――あんなににこやかに付いてこられたらなぁ・・・。

初めてできた学校で一緒にいてくれる人は、友達や親友とかいうステップをまるまる無視した、己をツナの舎弟と言い張る彼だった。
忠犬よろしくあれやこれやと気のきく彼に、最初は戸惑っていたのに、いつのまにか当たり前のようにツナの中に浸透していた。

――きっと、トイレに行きたくなかっただけだよね。

うんうんと自分で納得しながらトイレを済ませて教室に戻る。
そこで『お帰りなさい。』と笑顔で獄寺が出迎えたせいで、ツナは先ほど頭をよぎった不安をすっかり忘れてしまった。


そのままいつものように退屈な授業が続き、やっと昼休みになる。
そこで普段なら、
『10代目!今日は天気もいいですし屋上で食べましょう!』
とか、嬉しそうに言いながらすぐに駆け寄ってくるはずの彼が、今日は来ない。
ツナが教室を見渡すと、自分の席に座ったままぼーっとしている彼を見つけた。
ツナはこのまま待ってるべきか逡巡した後、いつも待ってるだけじゃ悪いよな。と思い直し、彼の元へ。

――もしかしたら寝ぼけてるのかもしれないし。

そう思い、後ろからそっと名を呼ぶと、獄寺が嬉しそうに『はいっ!』振り返った。
・・・どうやら寝ぼけてはなさそうだ。

「・・・えーと・・・今日のお昼はどうしようか?」
ハッキリ言わず、相手に決定を任せる聞き方をしながら、獄寺がいつものように何か提案してくれるのを待つ。

「じゃあ今日も屋上に――」
にこやかに彼が言いかけたとき、彼がちらりと窓の外を見た。ツナはそれに気づかない。
「――っと。・・・あ!忘れてた・・・俺そう言えば昼休みにどうしてもやらなきゃいけない用事があったんでした。
すいませんが、10代目は適当に誰かと食っといてくれませんか?」
ぺこりと頭を下げて申し訳なさそうに言う彼に、ツナがどうと言うこともできない。
「――・・・あ・・・うん、分かった。・・・俺、誰かと食べてくるね。」
曖昧に笑ったような変な顔をして、ツナは反転し、そのまま獄寺を見ないようにしてスタスタと教室を出て行く。
なんだか裏切られたような、捨てられたような、突き放されたような、そんな言われ方だった。
ツナには彼の目が暗に迷惑だと語ってるように感じた。

胸が詰まるような衝動に、ツナは走ることによって耐える。
――たかがお昼の誘い断られたくらいで・・・。
頭ではそう思うが足は止まらない。心まで早く教室から、彼から離れてしまうことを望んでいるようだ。
ぎゅっと目を瞑り、ツナは闇雲にただ走るしかできなかった。





「・・・・・・すいません・・・10代目・・・・・・」

ツナが走っていく音が聞こえた教室では、ツナよりさらに悲痛な顔をした獄寺が、搾り出すように主人の名を呟いていた。











――――――――――
中書き。

なんか訳ありの獄。窓の外には何が!?・・・って展開わっかりやす〜・・・(自分に嫌気)
山は出ませんよ。ここで山出したらふらふらとツナそっちに行っちゃうじゃん。(苦笑)
ダメダメ。うちのサイトではよっぽどのことがない限り山ツナは書かんからね。
死ぬまで獄ツナで行きます。・・・たぶん。(弱気)

太字にカーソル合わせると意味出ます。


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