†† ギョクセンカ2 ††






「獄寺くんのバカ・・・。」

屋上で一人で食べる昼食は最高に不味くて。
でもそれが今までの普通だった訳で。

溢れ出る感情を持て余したツナは、母親が作ってくれた弁当に向かって愚痴を零すことしかできない。

「急にあんな素っ気なくならなくたっていいじゃんか・・・。俺何か悪いことした・・・?」

一人悶々と考える。二、三思い当たる節がないこともない。

――普通の友達になってって言ったから?
(でもそれなら弁当くらい一緒に食べても良いはずだ。)

――前に、学校では大きな声で名前呼ばないでって言ったから?傷ついた?
(そんな今更な。最初から言い続けてたし。)

――・・・俺のこと嫌いになったとか・・・
(だって俺なんて死ぬ気弾がなきゃ何もできないし勉強できないしチビだし弱いし根性ないし負け犬だし・・・・・・)

「・・・これだ・・・これしかない!」
きっと俺のダメさに嫌気が差したんだ。なんでこんなやつの舎弟にならなきゃなんないんだって思ったんだ。


・・・・・・・・・・・・。



「――・・・どうしよう。」



獄寺がツナのダメさに気付き、ツナから離れていったとして、それをツナが言い留めることはおかしいのではないか。
舎弟になるかならないかは本人が決めることだし、ツナにはそんな無理強いはとてもできない。
じゃあどうすれば?どうすれば現状を打破できる?
部下になるのも急。冷たくなるのも急。なんなんだあの男は。
・・・考えても答えは出ない。

「は〜ぁ。これから誰か一緒に食べてくれる人いないかな〜。」
ツナは早々に獄寺との仲を取り戻すことを諦めてしまった。

――嫌われてるんだから、今更俺が何しても変わらないよね。

困難なことに当たって砕けることを恐れる。そういう思想が、彼の負け犬根性の根本理由であることに、ツナは気付かない。



「・・・卵焼き・・・パサいな・・・。」

独り言が厳しい夏の日差しの中に溶けてゆく。



ツナはなんだか少し、泣きたくなった。





下校の時間になって、生徒達が仲の良い友達と一緒に帰ったり、部活動に行く中、
ツナは、獄寺と目を合わさないように、視界に入れないように細心の注意を払いながら、猛ダッシュで教室を出た。
また獄寺に迷惑そうに突き放されるくらいなら、初めから彼に関わらなければいい。
そう思っての行動だった。


此方を完全に拒絶するように走り去っていくツナの背中を見た獄寺は、ガラにもなく窓の外を睨んだ。




「――・・・嫌われちゃったらどーしてくれるんですか・・・。」



その呟きは窓の外にも、走り去る彼の耳にも届きはしない。






*****





「はぁ・・・。」
――そして今日の朝。

学校に行きたくないと布団に張りついたツナを、鬼のような形相の母親が叩き起こし、追い出されるように家を出る。
通学路でツナは、昨日のことを思い憂鬱になった。

――獄寺くん・・・怒ってる、よね・・・。

そう考えてツナは溜息をつく。

――でも先に素っ気なくしてきたのは獄寺くんだし・・・。

夜の布団の中は思考を暗い方暗い方へと押しやる。
昨日一晩考え込んでるうちに、
獄寺くん酷いよ⇒でも走って帰っちゃうのはやりすぎかも⇒そういえば自分はたいしたことされてない⇒獄寺くんきっと怒ってる・・・
と、どんどん陰気な気分になっていったのだ。


――・・・せめて昨日のことくらいは謝ろう。

そう結論を出して、実行に移すことを考えてまた溜息をつく。
直接会って謝るというのは、簡単そうで実は凄く怖いことだ。
またはぐらかされたら?嫌がられたら?疎ましいと言われたら?
そんな弱い考えばかり浮かんでくる。
ツナはそれらを打ち消すようにぷるぷると首を振ると、目の前に聳え立つ校舎を睨んだ。



*****



にかっ


「おはようございます10代目っっ!!」

――あれ?

「・・・・・・・・。」

――怒って、ない?

「・・・・あっ、お、おはよう獄寺くん。」


意を決して教室に入ってすぐに彼を見つけると、視線を感じたのか、彼はふとこちらを振り返り――

すっごい笑顔で走り寄って来た。


あまりに嬉しそうににこにこ笑って挨拶されたものだから、暫し呆然としてしまって、はたと気付いてこちらも返す。

「今日は英語の小テストがあるらしいですよ!10代目は勉強しましたか?」

あぁもう会話してるだけで死にそう。
そんな顔をしながら幸せいっぱいで話す獄寺にツナはどう反応して良いか分からなくなる。

「いや・・・してないけど・・・。」
あんな状態でできる訳ないよ・・・
困惑した顔で言葉を濁すツナに、

「それは大変ですよ!――ちょっと待っててください☆」
獄寺はいそいそと単語帳を持ってきて、

「このテストで追試になったら親御さんに電話かけられるらしいんですよ。
親御さんって、そういう電話がかかってくると凄く怒るんですよね?」

「うん・・・。」
確かにそんな話を前にしたかもしれない。

ツナに確認をとった獄寺はぱらぱらとテスト範囲を開きながら、
「じゃあ俺が山張りますから10代目はそれを――」
そこまで言って獄寺は『しまった!』というのの最上級みたいな顔をして、バンッと音を立てて単語帳を閉じた。

「いやっ、えっと、その・・・お、俺も勉強全然してなかったみたい、です。」
あわあわと慌てながらじりじりと後ろに下がり、言う彼に、ツナは驚く。
「え、でも今、山がどうとか――」
「うっ・・・」

痛い所を突かれて、獄寺は呻くと、


『・・・・・・・・・。』


「すっすいません!!」

場の気まずさに耐えきれずに、走って教室から出ていった。


置いてきぼりをくらったツナはぼやく。

「な・・・・・・なんなの・・・一体・・・。」

獄寺の訳の分からない行動に、昨日から延々悩み続けたツナの頭はいい加減ショート寸前だった。







――――――――――
中書き。

あーもう展開ばればれやって言ってるやん!!(何ギレ)
いいんだ〜
心理描写がドキドキするって言ってくれる人いるも〜ん
そういう人のために頑張ります☆

獄寺はバカだからいつも言ってから気付く。
そして言った言葉は戻ってこない。
ははっお馬鹿だね!(そこが愛)

太字にカーソル合わせると意味出ます。




BACK   NEXT