つける葉は

それはまるで掴まれた心臓のようで。


ああ貴方にならそれができる。

――俺の・・・全てを・・・





†† タツナミソウ2 ††





「――で。これからどうするんですか?」

落とした煙草をぐしゃりと踏み潰し、獄寺は言う。
リボーンの一言に納得はしたものの、現状はなんら変わったわけでもないのだ。
胸をチリチリ焦がすような不安に、どうして良いか分からなくなる。

「まぁそう焦るな。・・・付いて来い。」
リボーンはいつもの顔のままそう言うと、くるりと学校に向かって踵を返した。

「――えっ?」
イライラと新しい煙草に火をつけていた獄寺はその行動に、また煙草を取り落としそうになるのを何とか耐える。

「なんで学校に戻るんですか?10代目はあっちに・・・」
車の消えた先を指差し、そわそわと落ち着かない獄寺に、

ドンッ

――ッッ!?

『黙って従え』と言う代わりにリボーンは振り返りもせず、己の肩越しに一発放った。

こっちを見もしないで、万が一当たったらどうするんだー!
と、ツナがいてくれれば獄寺の代わりに突っ込んでくれるのだが、彼にそんな大それたことは出来ない。
掠った銃弾で頬から血が流れるが、それで逆に冷静さを取り戻し、獄寺は黙って幼き殺し屋の後を追った。



「・・・敵の組織がどれほどのものか分からねーのに、学校帰りの軽装で乗り込んで行くバカがどこにいる?」

ガチャリと扉を開けてようやくリボーンが振り返る。

「こ・・・ここは・・・。」
そこは、以前獄寺が招き入れられ、殺しのイロハを教授してもらった消火栓だった。

コーヒーを飲むためのようなここで、一体何をするつもりなのかと呆然とする獄寺を置いて、リボーンはするりと中に入る。
獄寺は入るべきなのか否なのか、一瞬迷った末このまま待っておくことにする。
入れと言われなければ入ってはいけないような気がしたのだ。

しばらく消火栓の中からのごそごそという音が、誰もいなくなった校舎(職員は別館)に響き、

「受け取れ。」

端的なセリフが獄寺にかかり、何か黒いものが視界を過った。

「わっ!・・・とととっ。」

反射的に受け取って良く見てみると、それはどこにでもありそうな型の黒の皮で出来た鞄だった。
中はずっしりと重く、受け取れと言われた獄寺は次はどうすればいいのかと指示を待つ。

「開けてみろ。」
自分も出てきながらリボーンが言う。彼自身は何も持っていない。

「失礼します・・・」
彼の行動の意図が読めないながらも、一応ぺこりと一度頭を下げた後、獄寺は両取っ手の間にあるチャックをジーーッと開ける。


鞄の中身を見て、獄寺はリボーンを見上げた。
「――リボーンさん・・・これ・・・。」

鞄の中には獄寺愛用のダイナマイトが見ただけでもざっと数十本は入っていた。

「俺の役目はツナをファミリーのボスにすることだからな。
どこで何が起こるか分からないこの世界に、まだ弱いツナを引き込むんだ。
そこらじゅうにそれ相応の準備はしておいてもやりすぎにはならないだろ。
・・・そのダイナマイトはツナの右腕であるお前が、こんな事態に陥った時用に置いていたものだ。好きなだけぶっ放せ。」

『ツナの右腕』。

"あの"リボーンにそう認めてもらえたことが嬉しくて、

「――ッはいっ!」

獄寺は力強く頷いた。


「あの・・・リボーンさんは何も持っていかないんですか?」
手ぶらにしか見えないリボーンに獄寺が首を傾げる。さっき軽装で乗り込むバカはいないとか言っていなかったか・・・?

「俺は見えないところに隠してあるんだ。ぱっと見はわかんねーだろ。」
「ははぁ〜・・・。」
感心する獄寺にリボーンは『それよりさっさと行くぞ。』と言いながら消火栓の扉を閉める。

「あっ・・・はいっ!」
自分を置いてスタスタと行ってしまうリボーンを、獄寺は急いで追いかけた。



――そのまま校門まで戻ってきて、リボーンは上着のポケットから何かを取り出した。

「・・・?携帯、ですか?」
黒い小型機器を耳に当てる仕草は携帯と良く似たものだ。

「そんなアシの着きそうな物使うわけねーだろ。無線機だ。」
バカにしたように言われて獄寺はぐっと詰まる。
何か少しでも言い返したかったが、リボーンが無線を始めたので仕方なく諦める。

「・・・ちゃおっス・・・あぁ・・・P5にいるからすぐよこせ。今すぐだ。」
一方的に用件を伝えてブチッと切る音。
数分もしないうちに『ギャギャギャッッ!!』とタイヤとアスファルトが擦れる音が辺りに響いて、
猛スピードで角を曲がってきた黒い車が二人の目の前で急ブレーキをかけて停まった。

「ちゃおっス。」
運転席でぜーぜーと肩で息をしているサングラスの男に、リボーンは片手を挙げていつもの挨拶をする。

「リボーンさん、お久しゅう!遅くなって申し訳ありません・・・。」
「いや、突然呼び出してすまなかったな。」

獄寺は二人の対話を見て、改めてリボーンの凄さを知る。
こんなマフィアの代名詞のような大の男に、呼び出しをし、敬語で話されている。
自分がこのぐらいの年の時は、確かやっと銃の使い方を覚えたくらいだ。

「獄寺。さっきの鞄の中にツナの発信機の受信機があるから出せ。」
「は、はい!」

獄寺はなんだか場の雰囲気に呑まれて余計に恐縮してしまい、大急ぎで鞄の底に入ってあった、
画面に桝目に緑色の線が走り、その中心の点が点滅している機器を取り出した。

獄寺からそれを受け取ったリボーンは、運転席の男に投げてよこすと自分も車に乗り込んだ。獄寺がその後を追う。

「そこに行け。できるだけ早くな。」

リボーンが命令すると、男が『はい!』と大きく返事をする。

アクセル全開の車は来た時と同じく猛スピードで走り出した。









――――――――――
中書き。

えっ何これリボ獄?と思った貴方。

やめてー!そんなつもりまったくないですから!
リボーンと獄寺なだけだから!変な目で見ちゃダメ!!(汗)(汗)

オリキャラも出ちゃうし(運転手)、勝手にどんどん設定作っていってるし・・・どうなるんだこの話。(どき・・・)


太字にカーソル合わせると意味出ます。






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