冬すらも軽く飛び越え、
強く美しく咲き乱れる小さな花。
いっぱいに増えて行くのを、
どうして止められることができるだろうか・・・
†† タツナミソウ3 ††
「割と近いです。もうすぐ着くと思いますよ。ちょっと辺鄙な場所ですが。」
緑の桝目に点滅する点。たったそれだけしか映し出さない機器を見て、当然のように男は言った。
――あれをどう見てそんなこと分かるんだ?
獄寺の疑問は疑問はすぐに解ける。
男はどこかから短めのコードを取りだし、機器とカーナビとを繋いで行き先を知っていたのだ。
――・・・なんつーか・・・拍子抜けするな・・・。
急に男が身近な存在に思える。
『カーナビ』なんて家族旅行で張り切った父親くらいしか使わないものだと思っていた。
微妙な面持ちでバックミラーに映る男の額を見ていたら、リボーンから声がかかった。
「着替えろ。」
そう言って手渡された服を見る。
イタリア製のスーツにイギリス製の靴。いわゆるマフィアの正装だ。
恐らくかなりの値が張るだろうそれらの物に、全く手を付けずそのままリボーンに返し、獄寺は言う。
「俺は別にこのままでいいです。汚してしまうといけないし・・・。」
「制服で身元がばれるとは?」
問う男に獄寺は笑う。
「誰一人として生きて帰しません。」
彼は非常に怒っていた。
*****
「――ここです。」
車のエンジンを切り、着いた先は倉庫街。名前も聞かない中小企業がここの一画を所有していると、男は言う。
「そいつらが黒幕って訳だ。」
車から降りながらリボーンが言い、獄寺がそれに続く。
「本当にここまででいいんですか?なんなら俺も――」
運転席の窓を開け、心配そうに男が言う。
「これは、ボンゴレファミリーの問題だ。お前は関わるな。それとも――」
リボーンの表情から意図を読み取り、獄寺がセリフを引き継ぐ。
「俺らがこんな雑魚にてこずるとでも?」
明らかな嘲笑はその雑魚に向けられたもので、男はリボーンさえも酷く腹を立てていることに気付く。
「・・・いや。すいません、少々出過ぎました。」
苦笑した男は車のエンジンをかけた。
「では俺は行きます。迎えがいる時は呼んで下さい。御武運を・・・――っと、これはいりませんでしたね。」
最後にそう言い残し男は去った。
ひゅぉぉぉ・・・
ビル風が二人に向かって吹き抜ける。
「・・・二対多数。いけるか?」
リボーンはあえて分かりきったことを聞く。
巨大ビル――とまではいかないが、それでも10階以上はある建物を見上げて、獄寺は口の片端を持ち上げた。
「――上等。」
自動ドアを抜けると、真正面に受け付け兼、警備員と思われる制服を着た男が二人いた。
「おい、君ここは遊び場じゃないぞ。」
辺鄙な場所の倉庫街に建つこの建物に制服で入ってきた少年に、警備員は不信そうに声をかける。
煙草を吸い、ポケットに手を突っ込んだ中学生くらいの少年は、そのセリフを聞き目を細めて笑った。
そして、次にその目がキッと見開かれた時、警備員は身を固める。
少年の瞳は獣さえ射殺せそうなほど怒りに燃えていたのだ。
「先に遊びじゃなくしたのはどっちだ?」
二人の警備員の頭が同時に吹っ飛んだ。
獄寺が導火線を極力短くしたダイナマイトを両ポケットから出し、一瞬で火をつけ彼らの顔に放ったのだ。
どさどさっ
男達が倒れる。
その内一人の頭を踏みつけそこに獄寺は唾を吐いた。
「・・・10代目に何かしてやがったら本当に殺してやる。」
獄寺は、火力を落としたダイナマイトでチリヂリになった髪の毛から煙をあげ、
顔面を焦がして完全に失神した男達をそこに残して先に進んでいく。
――――――――――
中書き。
マフィアの正装なんて知りませんよ。適当です。やはは。
最初、頭が吹っ飛ぶ場面。本当に頭を消し飛ばせて、獄寺の怒りを表そうとしたんですが、
さすがにそこまで残酷ではないだろうと考え直し、読者さんをビックリさせるような流れに変えました。
・・・ビックリしましたか?(笑)
太字にカーソル合わせると意味出ます。
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