地がひび割れ乾いていても
一面に花を植えればいい。

とても丈夫な花だから
何にも負けずに地を守る。

雨にも風にも負けず。

実ってはいけない花は、
枯れてしまっても構わないから・・・






†† タツナミソウ4 ††






「VIPっつったら普通最上階だよな。」

受付を通り抜けて真正面にあるエレベーターに乗り込み、そう呟いた獄寺は、
一番上の12のボタンを押してもエレベーターが動かないことにしばらくして気付く。

「・・・・・・。」

獄寺は二秒ほど扉を睨んだあと、すぐに行動に移った。






「ドアが開いたらすぐに打て。」

「けっ、バカなガキだ。たった一人で乗り込んで来るなんてな。」

「おい気を抜くなよ。ガキといっても警備員二人を一瞬でのしたなかなかの手練れだ。」

「はいはい。・・・でもその手練れもここで蜂の巣ですよ。」

監視カメラを見て、エレベーターを止めた後、すぐに集結した男達が10人ほど、扉の前で銃を構えている。

狭い狭い箱の中。逃げ出せるわけもない標的に、男達は全員、多少なりとも気を抜いていた。

「よし、開けろ。」

だから、そのドアが開いた時、そこに黒の鞄しか残されてないことに全員が目を見張ってしまった。

「――バ」
バカなっ!!


男達の叫びは爆音にかき消された。






研ぎ澄ました神経で、ドアの外からの小さな話し声に気付いた獄寺は、
音も立てずに真上に跳び、証明を箱内に落とすために桝目状に張られた金網に
両手の人差し指と中指だけ突っ込み、そのまま、たった四本の指だけで体を持ち上げ、全身を天井にぴったりと沿わせた。

「バーカ。」

ドアが開くのを見計らって、さらに指二本で全体重を支えた、少々間抜けな格好で、獄寺はダイナマイトを放った。


ドンッ


小気味いい音がして天井に貼り付いたままの獄寺にも慣れた衝撃が襲う。

敵の気配がしなくなってから、獄寺は煙の立ち込める箱内にスタリと降り立った。

「不意打ち食らわそうなんて卑怯な・・・。」

マフィアはマフィアの筋を通す、真っ直ぐな獄寺には、この男達の・・・この組織のやり方が許せなかった。


煙晴れ止まぬエレベーターから出た獄寺は、後方の、爆発の直撃は免れただろう男の胸倉を掴んだ。


「10代目はどこだ。」


地を這うようなその声に、男は飛びかけた意識を取り戻す。

「・・・・・・ぅ・・・上だ・・・・・・それしか――」

簡単に吐いた男に、獄寺は大きく舌打ちし、胸倉を掴んだ右手をそのまま床に叩きつけた。
当然掴まれたままの男は頭を強く床に打ち付ける。声をあげる間もなく男は完全に気を失った。

「結局しらみ潰しに当たるしかねぇのか・・・。」

階段を見つめて獄寺は溜息をついた。







*****







「――雑魚が・・・次から次へとッッ!!」


二階、三階、四階・・・と上がっていく内に、どんどん敵の密度が増してくる。

適当に偉そうな男を捕まえては締め上げるが、どいつもこいつも上上上上・・・。

しかも階段が全部繋がってる訳ではなく、一階一階バラバラに位置してあるので、
いい加減獄寺のイライラも限界に達しようとしていた。


「あった!階段!!」


上に上がる前に階上へダイナマイトを数本放る。これはもう習慣と化していた。


ドンッ


「ぐあっ!」
「・・・うっ!」

バタバタッ


上から聞き慣れた呻きと人が数人倒れる音。


「馬鹿正直にそのまま上ると思ってんのか・・・。」


敵の馬鹿具合に、獄寺は頭痛がした気がした。






*****






肉の焦げた嫌な匂いが鼻を突く廊下を走りながら、彼は主人を思う。



――10代目・・・・・・どうか・・・どうかご無事で・・・!!



そして彼は最後の階段を一気に上った。

十二階まで、とうとう上り詰めた獄寺は息を切らしながら辺りを見渡す。


そこに、






「―――は、離せよッ!!」







求めて止まなかった己の主人の声が響いた。









――――――――――
中書き。

なんか質問がちょっとあったんですが、(妹から)
タツナミソウは獄寺で、地はツナです。
花は獄寺のツナへの恋心。

・・・初めは全然そんなつもりじゃなかったので、
必死に帳尻合わせしようとしてます。(苦笑)


ツナ・・・生きてたね・・・(笑)


太字にカーソル合わせると意味出ます。






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