夢を、見た。

とても大事な人がいなくなる夢。

傷だらけで笑う彼。

ダメだ

ダメだ

そんなことしてもらっても俺は――






†† タツナミソウ5 ††







「・・・・・・ぅ・・・」



うっすらと目を開ける。

なんだか体の節々が痛い。
頭もくらくらするし・・・。

数回瞬きをして目の前の壁を見つめ、やっと自分の置かれた状況を理解する。

そっか・・・俺、変な男達に・・・

体が痛いのは床に寝かされているからで、
頭がくらくらするのは得体の知れない薬を嗅がされたせいだったと思い出す。

――って、のんびり状況判断してる場合じゃないっ!

ガバッと起き上がると後ろから声が聞こえた。

「おっ、起きたみたいだぜ。」

嫌な予感がしてゆっくり後ろを振り返ると、黒スーツの男がざっと数十人、じっとこちらを見ていた。



――・・・俺、もうダメかもしんない・・・。



今まで何度か死ぬ思いをしてきたツナだったが、今度こそ酷い眩暈に気が遠のきそうになった。



「・・・しっかしちっせぇなぁ。これが未来のファミリーのボスってことになってんだから、なんか笑っちまうな。」

一番手前にいた男が近づきながら言う。

真後ろは壁。
後ずさりすらできない状況にツナは男を睨んだ。

「・・・なりたいわけじゃないよ。」

精一杯なのだろうが、弱々しい視線に男は苦笑すると、ツナの腕を取った。

「ほっせぇ腕。」

男の行動におぞ気のたったツナはその腕を振り払おうとする。


「―――は、離せよッ!!」


男がまた苦笑して、ビクともしない腕にツナの顔が引きつる。



そこに。



「10代目に触れんじゃねぇッ!」



救いの声が響いた。



ドカッ!

次の瞬間、目の前にいた男が文字通り吹っ飛ぶ。


男の顔面を思いっきり殴りつけた獄寺は、凄い勢いでしゃがんでツナの両肩を掴むと言った。


「お怪我は!?」


あまりに切羽詰ったその様子に慌ててツナは返す。

「ない・・・と思うよ。どこも――」
――痛くないし。

そのセリフは獄寺の次の行動によって中断された。


「――った・・・良かった・・・!・・・10代目の身にもしものことがあったら、俺ッ・・・・・・」


「獄寺くん・・・」

思いっきり両手でぎゅうぎゅうと締め付けてくる獄寺に、身動きの取れないツナは申し訳なさそうに彼の名を呼ぶ。

その声にハッと今の状況に気付いた獄寺は、


「――あっ・・・す、すいません!なんて無礼なことを・・・っ!」


抱き締めた時と同じか、それより速い勢いで離れて土下座をする。

その様子にツナが口を開きかけた時、

「感動の再会はすんだか?」

男達からの声がかかった。



獄寺はそれだけで人が殺せそうなほど鋭い目で後ろを睨むと、ツナにだけ聞こえる声で言った。


『・・・逃げます。』


ドガァンッ!


目暗まし用のダイナマイトが爆発して、起こった煙に紛れて獄寺はツナの手を引っ張ると、急いでその部屋を出る。

「あっ!」
「追え!逃がすな!」

悪党が良く言うようなセリフを後ろ手に聞いて、獄寺は元来た道を走る。






「――・・・おーいてぇ。・・・本当にこれでよかったんですか?」

顔面を殴られて座ったままの男が腫れた頬を押さえて、煙で顔が見えにくくなった男を見上げて言う。

「あぁ。・・・すまんな。」

立った男の申し訳なさそうな声に、座った男は笑う。

「なら今度ボーナス下さい。」

「・・・それとこれとは話が別だ。」

座った男は声をあげて笑った。







廊下で向かってくる敵を殴ったり蹴ったり避けたりして往なしながら進んでいく。

――階段までもう少し・・・。



「――ッ!!」



獄寺はそこで立ち止まった。


よくよく考えてみれば帰る道はそこしかない訳で、主人を連れ出した部下がそこを通るのは明白で。




「――さっきのお返しだ。」




どこかの階で爆破したはずの男が笑って手榴弾を放るのを、まるでスロー画像のように見つめた獄寺は、



「――10代目ッ!!」



迷うことなく主人を抱え、手榴弾に背を向けた。









――――――――――
中書き。

もうそろそろ某さんの絵が出せそうです。よかった・・・vv

正義のヒーロー登場ですねー。
男がキャラキモい。

体が痛いという表現であらぬことを想像した人、まさかいないですよね・・・?(笑)
今読み返してみてちょっと思ってしまいました。
ふっ・・・根っからの腐女子たぁオレのことよっ!!(ふんぞり)



太字にカーソル合わせると意味出ます。






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